武蔵とTOMO 兄弟の伝説 ブラザーズ・オン・ザ・リング
 筆者:不動 武
 第四章 武蔵流 釣りの幸福理論
 掲載日:2012/04/09    ページ: 1 2 3 
   「武蔵流漁業」
著者は「魚は食べるもの」という感覚がしみ込んでいる。別に魚を食べる人が優しくないとか野蛮だとかは決して思わないが、武蔵氏には生まれつきの優しさと格闘技の中で培われた生命への愛しみが育てられていたのであろう。余談ではあるが、ほとんどの人は気付かなかっただろうが、武蔵は試合で勝って涙を滲ませたことがある。嬉し泣きではない。いざ試合が始まってみると、決してパワーのない相手ではないが、当日の対戦相手に手ごたえがない。格闘技の試合にはそういう状況が生まれることはままある。同じ対戦相手でも、「時と場所」で発揮できる実力が異なる事がある。それでも勝負である以上、武蔵氏は勝たなくてはならなかった。あるラウンドで武蔵氏のパンチがクリーンヒットして相手はそのまま立ち上がれなかった。完全なKO勝ちだった。気を失って倒れた相手を見ながら武蔵氏は涙を滲ませた。
武蔵氏は肉食を禁じたベジタリアンでもない。時々、武蔵氏は釣り人をこえて漁師にすら変身することがある。大阪に戻ってくると、シーバス、即ち、スズキ釣りによく出かける。そして時には爆釣する。スズキは無論、洗いやムニエル、塩焼きにしても美味しい魚だ。時には武蔵氏とTOMO氏の兄弟で3ケタ近く釣ることもあり、しかもこれがデカイ。こういう場合、この「漁師ブラザーズ」は食べるに適したサイズで食べるに適した匹数だけを、鮮魚市場ならぬJR天満駅近くの正道会館総本部の寮の冷蔵庫に持ち込むのである。冷蔵庫に入らな ...(次へ)